境界確認を求められた方へ知っていただきたい最低限のこと

目黒区の土地家屋調査士 田村測量事務所/田村土地家屋調査士事務所です。 

田村測量事務所では、土地の境界トラブル解決の依頼を随時受け付けております。


 土地の境界に関する測量を行う場合、隣接地の方に境界確認をお願いするケースが多いです。

 もちろん、依頼内容が現況を測量するだけの作業だったり、他の図面から立会いをお願いするまでもなく境界が確認できる場合は、そのようなお願いをしない場合もあります(敷地に立ち入る場合の立入り許可のお願いやご挨拶は別)。

 今回は、この境界確認に関して、隣地の方々に知って欲しいことと、土地家屋調査士としての切なる願いを述べさせていただきます。


1.境界立会のお願いに行くと…

 隣地の境界確認をお願いすると、その場で当方側の都合や目的をご理解くださり、快くご協力いただく方が非常に多く、この点に関して、心より感謝申し上げる次第です。皆様のご協力で、作業がスムーズに進行するとともに、境界が明確にされ、それが地積測量図等の登記関係書類に反映されることで、不動産の表示と権利の明確化が実現されていることは言うまでもありません。

 一方で、我々土地家屋調査士や不動産の登記制度、境界確認の必要性等の認知度がいまだに低い状況であり、いきなり「隣との境界を確認したいので協力して欲しい」と言われ、すんなりそれに応じて良いものか、お悩みになる方も依然として多いことは否定のできない事実です。

  

 人間にとって、不動産(負の不動産を除く)はお金に並ぶ、大切な資産です。

この大切な資産を構成する「土地の境界」に、他人が関与してくるとなると、用心するのは当たり前でしょう。したがって、我々土地家屋調査士も、依頼人の目的、境界確認の重要性や、境界標識・境界確認書が無い場合のリスク等を隣接地の方々に十分説明できるよう努力しています。

ですが、説明前に門前払いとなってしまう残念なケースもあり、ここにメッセージを残すことにしました。立ち会うか悩んでいらっしゃる方がこれを読んで、前向きになってくれれば良いのですが…


2.土地家屋調査士の立場と境界確認の本質的な目的

 まず知っていただきたいのは、我々土地家屋調査士は、依頼人から境界確認を依頼されてはいますが、境界の確認に関しては、公正中立な立場で調査・測量を行わなければならないとされていることです。各種根拠資料や状況等を精査して境界確認を行いますので、根拠なく身勝手に依頼人に有利な境界線をご提案することはできません。我々土地家屋調査士は、敵だったり、相手方だったりという立場では決してないことを、どうかご理解頂ければ幸いです(ADRに関する業務を除く)。隣接地所有者様側のご認識や、境界に関するお考え、関連するお悩みをお伺いしますので、まずはそれを立会いの場でおっしゃって頂けないでしょうか。

 次に、境界を確認する作業は誰のためにあるかという点です。当然、依頼人に何らかの目的やお悩みがあり、測量や境界確認を行っている以上、敷地の測量図は依頼人の土地のものを作成しますし、納品物の多くは依頼人にお渡しします。この点からすると、作業はすべて「依頼人のため」と見えてしまうかも知れません。しかし、お互いに接する土地の境界を確認し、接する土地同士の境界が明らかになることや、作成・取り交わす境界確認書は、それぞれの所有者が1通ずつ保有することになることを考慮すると、境界確認が当方依頼人のためだけに行っているわけではないということをご理解頂けるかと思います。少なくとも当方依頼人との土地の境界は確認済みであることを、対外的にも証明することが可能となります。立会いにより起こり得るリスクや心配をどのようにお考えになっているか分からないのですが、少なからずメリットもあることを知っていただきたいです。



3.境界標識の設置と境界確認書の取り交し

 境界確認が無事行えた場合には、境界標識がなければ設置し、境界確認書を当事者同士で取り交わすのが一般的です。境界標識がなければ、目視して境界の位置を確認することはできません。立ち会った本人であればある程度認識することは可能かもしれませんが、きちんと境界標識を設置することで、第三者にも境界を示すことが可能となります。

 境界確認書は、通常2通作成し、それぞれの土地の所有者が捺印したものを、各自1通保有します。この境界確認書には、我々土地家屋調査士が作成した図面が綴られますので、後日境界標識が見当たらなくなってしまったとしても、当該図面に基づき、復元できる可能性が高まります。

 この境界確認書に捺印をすることに、抵抗感がある方も多くいらっしゃるかと思います。余談ですが、登記手続きでは、以前はこの境界確認書に印鑑証明付の実印等を要求するケースもありましたが、当該捺印も認印で良い時代に移り変わり、今では署名さえすれば印鑑さえ不要としても良い時代になりました。もっとも、図面の綴り込みがあるため、現代においても引き続き認印を押していただく方が良いのでは、と個人的には考えています。

 登記手続き上は、隣接地所有者様が境界に異議無いことが確認できれば、その旨を報告し、境界確認書を取り交わせなくとも、登記が受理されるケースはあります。ただし、それぞれの土地所有者に境界確認を行った履歴や根拠資料が残らないため、将来、境界に関する意見の食い違いが生じる可能性が残ってしまいます。

 世にはびこる詐欺や不当な契約を避けるためには、不安な書類には捺印しないというスタンスはとても良い姿勢だと思います。しかし、捺捺印すべき書類、自らの資産を守るための内容の書類、捺印することで、隣地が第三者に変わったとしても、自らの権利を主張できる書類等までもその姿勢を貫くべきかどうかは、疑問のあるところです。不安な書類であるならばその不安を取り除くまで我々土地家屋調査士に問い合わせて頂いて結構ですし、文面や内容に疑義があれば、できるだけそれを取り除けるよう、努力する次第です。

 それでも捺印して良いか不安な場合は、他の土地家屋調査士に間に入ってもらっても良いと思います。多少の費用がかかるかもしれませんが、他の土地家屋調査士が入ってくだされば、境界の位置や文面に問題が無いか、チェックしてくれるはずです。



4.土地家屋調査士からの切なる願い

 自宅にいると、知らない業者や勧誘が多く、インターホンに出るのも怖いときがありますよね。私も自宅にいるときは勧誘や営業への対応は苦手で、できれば居留守を使いたいときもあります。不当な契約や勧誘を受けるくらいなら、インターホンにはでないというスタンスも今後の在り方なのかもしれません。

 我々土地家屋調査士も、境界確認のお願いをする際は郵送で書類を発送させて頂いたり、インターホンをならさせていただいたりするケースもありますが、訪問時は不在等も多いことは存じ上げているため、必ずお手紙を残すようにしております。当該書面に、依頼人のお名前や、立会いの希望日時(この点もお叱りをうけてしまうこともありますが、勝手ながら希望を書かせて頂いています)、連絡先を記載し、隣接地の方々のご予定等のご連絡をお待ちするようにしています。

 もちろん、勝手に書類を送ってくるな、突然訪問してくるな等のお叱りを頂戴することもありますが、電話番号も分からず、法務局での所有者確認や現地でのお住まい状況程度の情報しか得られない我々土地家屋調査士にとっては、このような方法でしか、隣接地所有者様に連絡をすることができないのです。この点を非常に心苦しく思っている次第です。不安・不快にさせず、快く立会いに応じて頂けるような方法を日々模索しておりますが、なかなか良い方法が見当たりません。大変申し訳ございません。

 お忙しいところ大変申し訳ございませんが、どうか上記内容をご理解頂き、まずは何らかの形でお話しさせていただきたく存じます。


 境界確認に協力できない明確な理由があれば、是非教えてください。依頼者も理由が知りたいと思っているはずです。

 理不尽な理由で立会いに協力してくれなかったり、境界の確認を断固拒否するという場合、明らかな根拠資料があるのに境界の位置を認めないような場合は、裁判所や法務局による各種手続きから、別のアプローチを検討することになります。これにより境界が定まる可能性は高いですが、時間がかかるとともに、境界標識の設置は別問題となったりして、当事者間に遺恨を残すケースも多いです。

 我々土地家屋調査士ですら、立会い等に至らなかった現場や難航した現場は、なかなか忘れることはできません。車で現場の前を通る度に、自分の至らなさを思い出すくらいです。これが所有者となれば、なおさらでしょう。

 境界確認は、土地の所有者であれば、誰にでも必要となる時がくる可能性のあるものです。理不尽な理由で協力せず、その結果依頼人の目的が達成できなかったような場合は、かなり遺恨が残ってしまうと思います。意趣返しという言葉もあるように、過去の経緯を、当事者はなかなか忘れることはできません。

 我々土地家屋調査士は、そのような世界をつくらないよう、できる限り力を尽くし、土地所有者同士の境界確認が円滑に進むよう、日々精進しています。少しでも多く隣接地所有者の方々が立会いに協力してくれる世界が訪れることを期待して、この長いメッセージを締めくくりたいと思います。



ご自身の所有する土地、その範囲や境界は明確になっていますか?

「境界杭はこれだよ」と、子や孫、親戚、次の世代に自信を持って伝えられますか?

すこしでも不安であれば、是非田村測量事務所にご相談ください。