境界確認と土地の資産価値の関係性について

目黒区の土地家屋調査士 田村測量事務所/田村土地家屋調査士事務所です。 田村測量事務所では、財産保全のための測量や境界確認、境界管理を随時受け付けております。


境界確認の目的やその方法、土地家屋調査士の願いは、以前の下記ブログにて記述させていただきました。よろしければ、こちらもご一読いただけると幸いです。

「境界確認を求められた方へ知っていただきたい最低限のこと」


さて、隣地の方々に境界の確認をお願いすると、どのような目的で境界確認を行うのか、なぜ今確認する必要があるのかというご質問を多くいただくので、境界確認が土地の資産価値にどのような影響を及ぼすかということに絡めて、土地家屋調査士としての考えを述べさせていただだきます。

※あくまでも一個人としての考えであることを、ご承知ください。



1.財産保全としての境界確認・境界管理

 土地家屋調査士は、通常、「売買」「相続」「建替」等、土地やその上の建物の権利や物理的現況に手を加えようとする際に、境界確認をお願いすることが多いです。ただ、境界確認が、具体的な目的がある場合にのみ行われるのかというと、そうではありません。

 権利や物理的現況に手を加える予定はないけれども、境界自体があいまいなので、「財産の保全」を目的に測量をされる方も、同じように多くいらっしゃいます。

 測量した後に、その測量結果をどのように使用するかは人それぞれの具体的な目的があってのことですが、どのような最終目的があるにせよ、

  ・自分の土地の境界がどこに位置しているのか分からない

  ・境界付近の構築物が誰のものかわからない

  ・構築物が境界のどの位置にあるか、出っ張っていないかわからない

  ・境界を示す標識が、正しい位置で、きちんと明示されているのかわからない

  ・隣接する土地の所有者と、境界に関して、きちんと確認を行ったことがない

  ・一度は確認したが、隣地所有者が変わったので、当時の内容が引き継がれているかわからない

  ・登記簿記載の面積が、どの程度正しいのかわからない

といった懸念が1つでもあれば、境界の管理が十分であるとは言いがたい状況です。


2.土地の価値を維持するための境界管理

 以前の記事で、人間にとって、不動産(負の不動産を除く)はお金に並ぶ、大切な資産であると記述しました。

 皆様は、どの程度の頻度で、通帳の残高を確認するでしょうか。記帳するかどうかは別として、自分の資産がどの程度あるかは、ある程度気になるところではないでしょうか。

 では、ご所有の土地はいかがでしょうか。土地の価値はお金のように一目瞭然とはいきませんが、周辺環境や立地状況、管理状況等によって変動します。その中に、当然、土地の境界という要素が少なからず影響をしてくるのは事実です。影響する要素なのに、さほど気にしていないという方は多いのではないでしょうか。

 不動産を売買するとなった際、真っ先に確認するのは、「土地の境界」であることが多いです。実務上、売買では境界や面積の確認が重視されるためです。もちろん、境界が曖昧なままでも売買自体は不可能ではありませんが、買主や金融機関が敬遠することが多く、取引条件が厳しくなったり、売却が長引いたりするケースが目立ちます。 実際、境界に揉め事が生じているせいで、売却がなかなか進まないというお話しも数多く耳にします。 当事務所の経験上も、境界を明示して立会い確認を済ませておく方が、円満でスムーズに売却できることが圧倒的に多いのです。

※もちろん、公簿売買や境界非明示特約を選択することもありますが、その際は、実測面積との差異や境界トラブル等のリスクを十分説明する必要があります。また、地域や慣習によっては、境界非明示・公簿売買とすることが第大多数の場合ももちろんあるでしょう。

 境界が確認されていることで資産価値が高くなるとまでは言えないかもしれませんが、境界が曖昧であることは、資産価値を減少させる要因にはなり得るでしょう。

 このように、土地の本来の価値を維持するためには、それなりの境界管理が求められます。境界があいまいな状況を放置し、いざというときに決めれば良いというスタンスではなく、積極的に境界確認を行うとうスタンスの方が、ご所有の土地の資産価値維持にとっても良いはずです。


3.境界確認を求められた側のメリットとは何か

 財産の保全のためというと、特に建築をしたり、売却をしたりするのではないから、境界確認を「今」「あえて」行う必要がないのではないか、というお話しを頂戴することがあります。

 たしかに、測量の結果を何か具体的な目的に使用するのでなければ、あえて隣接地のお手間を取らせて、境界確認という作業をお願いする必要性が乏しく思えるかもしれません。

 ただ、お話しをしてみると、「ところで、境界標識は現地にあるのか?」「具体的に境界はどこなのか?」というご質問を頂戴することも多いです。

 境界が境界標識等ではっきりとしていて、当事者間がきちんと境界の位置を認識されているような状況(近年作成した境界確認書が既にお手元にあり、その当時から境界が動いた形跡がないような状況)であれば、再度の確認は不要かもしれませんが、このような質問を頂戴するような場合は、本質的に境界管理ができておらず、境界に関する認識があいまいな状況であることは言うまでもありません。目的が無いなら境界確認の必要性がないというのは、境界に関する問題を将来に先延ばししていることに他なりません。

 少なくとも境界確認を求められた箇所の境界が明らかになるのであれば、境界確認という行為が、決して無意味な作業にはならないと考えていただくことはできないでしょうか。私ども土地家屋調査士が間に入って、隣接地の皆様とお話しさせていただいたり、現地で立会いさせていただいたりする時間は、そこまで長時間ではありません。本当に短時間で終了することもありますので、境界を管理するという意味においても、是非ご協力いただけると幸いです。

※もちろん、ケースによっては追加の調査や測量、関係者との協議が必要になり、時間や費用がかかることもあります。このような場合は、境界を導き出すために複雑な作業が必要であり、潜在する問題も潜んでいる可能性もあるため、立会いの重要度がより髙いとも言えます。時間がかかりそうな場合は、事前にご案内します。

 私どもが行う作業は、依頼人の土地に関する境界確認ではありますが、関連する境界や隣接地の皆様のその他のお悩みも、その際にご質問いただいて結構です。依頼人様とは無関係な作業でなければ、当事務所では、隣接地の皆様方に費用を頂戴して作業を行うこともありません。今後、どなたかに境界管理や境界の調査をお願いするにしても少なからず費用が発生してしまうかと思いますので、私どもが入っている間に、お悩みをはき出していただければと思っています。

※なお、民法上は境界標の設置や測量の費用は隣接者同士で分担するという規定もありますが、売買等が絡む場面では、実務上、依頼者が全額を負担し、隣地の方にご負担をお願いしないケースが多く見受けられます。

※隣地同士で協議した上で測量を発注する場合等はお互いに負担という事例もあると思いますので、費用負担に関しては事例毎に異なることにご注意願います。上記記述は、あくまでも依頼人の都合で境界を確認する必要性が生じた場合の事例に関してのものとなります。

※当事務所ではなく、他社で作業・または立会いされる場合等は、実際の費用負担等を、念のため当該調査士にお尋ね下さい。

 これらの一連の動きを、メリットとしてお考えいただけるかどうかは分かりませんが、どうか前向きに、境界確認にご協力いただければ幸いです。

 


ご自身の所有する土地、その範囲や境界は明確になっていますか? 

 「境界杭はこれだよ」と、子や孫、親戚、次の世代に自信を持って伝えられますか?

すこしでも不安であれば、是非田村測量事務所にご相談ください。